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気まぐれbebeのひとり言

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ごゆっくり



2023/11/29

41才 決断(3

犬を飼う事になった

誕生月の売り上げが かなり良く
自分へのご褒美もあるのだろう
そう察して 協力する事にした

僅か73㎡の3LDK
ケージやトイレの置き場所を巡って
綱吉の要求が出た

キッチンの食器棚とは別に
高さ180cmのフードストッカーに
私が趣味で集めた食器がある
それを指して彼女は
「私には全く必要ない」と 

多少の処分は 覚悟していたが
違う言い方が出来ないものか

言い返したいのをぐっと堪えた

処分は 断捨離を超え
もはや終活の域になった
レジ袋に11袋の食器を 泣く泣く処分し
フードストッカーは勿論
ラタンのチェスト
ウォールナットのキャビネット
それらと中身の8割を処分し
残りは 断捨離した隙間に埋め
10日ほどで 取りあえずの場所を確保した

彼女が手伝ったのは リビングに
犬用ワックスを掛ける時だけで
夜遅くまで片付けていても
労いの言葉すらなく

片付けが終らないうちに
新しい家族を迎えた

彼女は コロナで休業中に
1年ほどヨーキーと暮らしていて
私より飼い方を知っているから
躾に関しては
細かく 煩く言うことは目にみえている
世話はするが口出しはしない と決めた

が、片付けの疲れと
容赦ない言葉にイラついてきた

彼女は 寝起きが悪い
そのことには だいぶ慣れた
だが 慣れるのと鈍感になるのとは違う
少々のストレスが積もり 次第に無口になる

彼女は 優しいところが沢山ある反面
辛辣な人でプライドが高い
だから その言い方を指摘しても
私を敵視し謝ることはない

その事が ずっと私の中に留まっている

私の鈍感力が足りないのか
疲れと苛立ちがピークになり
大喧嘩になった
口を利かなくなって 3週間経つ

言っている事が正しければ
謝らなくてもいいのとは違う

相手に不快な思いをさせたなら
悪意が無くても
謝るのが大人の対応だと思うが
相手が家族の場合
好かれようという 心理が働かないから
侃々諤々となる

家族であっても お互いに
理解しきれない部分はある
それぞれが 年齢を重ねるほど
理解できない部分が増える
家族だからこそ 理解して欲しい欲求と
理解できない相手への苛立ち

それに気づいた時に どう対応するか
どんな応えをつくるか
いま 試されている気がする

2023/11/23

『白いごはん』

A111

54才のカレと出会った
切っ掛けは 便利なツール

私に〝お気に入り〟の通知が届いた

見ると カレの顔・体型が私好み♡
だが 年齢を見て愕然とする
私の弟より ずっと若い

どうする? ほっとこう!
でも 気になる…

2日悩んで また写真を見る
すると
「たかが〝いいね〟だ!
    深く考えるな」と
もう一人の私が背中を押した

その勢いでメッセージを送る
「いいね!! 有り難うございます
 でも 年齢差 気になりませんか?」

直ぐにカレから
「元々年上好みだし 写真を見て
  綺麗な人だなと思ったので」と

それから1時間ほど
メッセージの交換をしてLINEに移り
深夜まで続く

翌朝 カレからのLINE
「おはようございます。
家の中も片付いたので出かけます」
私はベッドの中から
いってらしゃい⤴のスタンプで見送る

出かけます…の行先は
別の人との初デートかもしれない
でも いいんだ それが普通だもの
年齢差を考えれば
余計なやきもちを妬かなくてすむ
この年齢になってまで
嫉妬するのは疲れるし
楽しい方を優先しよう

カレのお相手は ほぼ40代
私とは20歳の差がある
そんな彼女たちと競争する
気力と体力は 今の私にはない

だから私は
おかずとご飯のバランスを崩し
うっかり二口残ってしまった
白いご飯でいい

その二口残ったご飯をどうするか

お味噌汁をかけて流し込むか
そのまま口に入れるか
どちらにしろ ご飯好きなら
残さないだろう

だから私は
二口残った 白いごはんでいい

疲れる恋愛は もういい
お腹がいっぱいだ

2023/10/31

おままごとが終るとき

20231125-172524

カレと知り合ったのはバイト先で
福島出身の1コ 年下の彼でした

付き合い出して間もなく
寮生活の彼が 荷物を持って
私の部屋に転がり込んできた

当時 ファミレスで働いていた彼が
本格的に料理を覚えたいというので
私の友達の伝手で
有楽町ガード下にある
フレンチレストランで働きだし
私は K化粧品会社に就職した

同棲生活が続いた夏休みに
二人で彼の実家に遊びに行き
彼が腕を振るい 二人で夕食を作り
夜は 別々の部屋で寝かされて
3日間 彼の実家で過ごし

東京に帰る電車の中で彼がボソッと
『お前には東京の人は合わない』って
兄ちゃんに言われたよ…と

それから数ヶ月

カレは職場でも中々モテる様だったけど
「好みじゃないよ」と笑いながら言い
有楽町の灯りに誘われ コック仲間と
時々 飲んで帰る彼の背中が恣意的に見えて

私は私でちょっと濃いめのメイクと
会社の制服が目立つのか
度々声を掛けられることが心地よく
モデル風のS社の美容部員と
遊び歩くことが多くなった

そんな二人の将来が見えなくなって
別れを切り出した私に
彼は何も言わず黙って頷いた


その数年後 ばったり彼と会った

当時の私は
吉祥寺ロンロン(現アトレ)の中の
お店が担当で
そのお店の前を偶然 彼が通り過ぎた

仕事が終わった後 30分ほど
二人でコーヒーを飲んでいる時
彼が独り言のように

『俺が東京に合わなかった』と

彼は 3つ年上の
シングルマザーと同棲していて
子供が「パパ」って呼ぶんだよと
苦笑いをして

彼女とは別れようと思ってると言いながら
コーヒーを飲み干し ため息をついた

少しの沈黙のあと彼が
返すのを忘れてた と言って
私の部屋の鍵をポケットから出した

(ずっと持っていたんだ)

その時の私には
付き合っている人はいなかったけど
戻ってくれば!? とも言わずに
黙って鍵をバッグに入れた

彼は有楽町のお店を辞めて
今は 吉祥寺で働いていると
お店の名前を教えてくれたけど
私は そのお店にはいかなかった

その時の私はもう
無邪気に同棲が出来るほど
若くはなかった

2023/10/24

危険な隣人

A13

JR・私鉄・地下鉄 14路線が乗り入れる
巨大ターミナル駅 新宿
この駅を毎日 午後と深夜に通過して
職場に行き 家に帰る

6年前の秋
いつもの様にこの駅に電車が着くと
土曜の夜のせいかお酒の匂いをさせて
化粧も落ちた魔女や血まみれナースたちが
様々なコスチュームで乗り込んできた

今夜はハロウィンか

若い男女が乗り込んでくると同時に
向かいの席に座っていた男が
私の隣に移って来た
(なに?なぜわざわざこちらに移って来たんだ?)

座席は満席となり
右から押されて男の太ももが
ぴったりと私に寄せて来た
(なんか気持ち悪いな
ま、いいか あと二駅 4.5分の辛抱だ)

男は「今夜は賑やかですね」と話しかけてきた
そうですね…
愛想のない返事をした

電車が揺れ 〝魔女〟の女の子が
よろけて私の膝が押され
私の躰が 男の方に倒れかかった時
男が 「飲みに行きませんか」
私は 真っすぐ向いたまま
「いいですよ」
(えっ!?本気か?何 言ってるんだ冗談ですと断れ)

駅に着いて車内がまた騒がしくなり
数人が降りてドアが閉まった

すると男が「次ですね」
(どうして降りる駅を知ってるんだ
ストーカーか?ヤバいぞ!
早く断った方がいい)

男は続けて
「駅前のBarはどうですか?」
今度は私の顔を覗き込んだ
(チラッと見えた横顔に見覚えがあった
誰だ?どこかで見た覚えがある
おい、私の海馬しっかりしろ 誰だ?
ダメだ 思い出せない)

電車がホームに入りスピードを落とし
駅に着き ゆっくりと立ち上がった
( 思い出した!
向かいのマンションの人だ 
洗濯物を干す時に 何度か見かけて
バルコニーの手摺に布団を干す時に目が合って
お互いに愛想笑いで会釈をした 
その時 私の胸が
ドクン♡としたのを覚えてる
その後も何度か
視線を感じることがあった)

0時に近いのに大勢の人が降りる駅で
長く並んだエスカレータの列にやっと入り

彼は 数人後ろに並んだ

エスカレーターを降りると
後ろから足早に歩く革靴の
小気味良い音がして私の横で止まった

二人は黙ったまま並んで歩いた

改札の手前のキオスクを通り過ぎようとした時
いきなり右手を掴まれて強く引き寄せられた

一瞬の出来事だった

右手は強く掴まれたまま
私達は 物陰に隠れてKissをした

2023/10/12

嫌われホストの夜食

バスを降りてアパートに帰る途中に
お洒落な看板のスナックがあった

当時 付き合っていたカレシと
初めて飲みに行った時にマスターから
店で働かないか?と
その後も行く度に誘われていて

彼と別れて数ヶ月経ったある日
店の前を通り過ぎようとした時
お客を送り出すマスターと
思いがけず鉢合わせをして
1杯飲んでいきなよ!と誘われた

帰ろうとしたお客も店に戻り1杯が数杯になり

当時 化粧品会社で働く私は化粧が濃く
やや派手な顔立ちが
水商売に向いていると思ったのか
帰ろうとした時にマスターがまた
働いてくれないか?と懇願するような勢いだった

彼とはもう別れたし
出勤日は
気まぐれでもいいことを条件に働くことにした

カウンター8席 小さなテーブルが2つの
さほど広くないお店だったが
いつも賑わっていて
お客は 4.50代の既婚者が多く
2.3杯飲んで
カラオケを数曲歌って帰る人が殆どだった


そんなお店に紫陽花が咲き出した
小雨が降る日にその男はきた

お客を見送りに出た時に入れ違いに
「いいですか?」と二人の男が入って来た

サラリーマンには見えない
高そうなスーツを着ていて
雨に濡れたから…と上着を渡されて
ハンガーにかける時に見えたタグが
当時はまだ日本では無名の
ゴージラインの低いアルマーニだった

二人はカウンターに座ると
バーボンを注文して
ひとりの男が私に名刺をくれた

ホストか…

黒沢年雄似の色黒のホストが
それから時々店に来るようになった

来るのはいつも遅い時間で
閉店になるまで飲んでいて
マスターが 彼は危ないから…と
いつもそのホストが帰るのを待って店を閉めた

その日は 彼もかなり酔っていて
店を閉めると言っても帰らず
私を送っていきたいと
しつこく言う彼に根負けして

仕方なく彼を表で待たせて
店の裏口を閉める時にマスターが
私の耳元で「気を付けなよ」と言った

店から5分ほど歩きアパートの階段下で
「ここでいいから」と言うと
コーヒーくらい飲ませてよ!と彼がニヤついた

仕方なく部屋にあげたが
今日の彼はちょっと危険な気がして
お湯が沸くまで
ヤカンの側で立ったまま話をして
ちょっとぬるめのお湯でコーヒーを入れた

ぬるめの珈琲を三口ほど飲むと
お腹が空いたから
何か食べに行かないかというので
アパート裏の人気ラーメン店に行った

お腹が空いたと言っていた彼は1/3ほど残し
私が食べ終わると
彼は『財布を忘れた』という
仕方なく私が払った

ホストの世界では
当たり前のことかもしれないが
昭和50年代当時の 私の日常には
女性が男性に食事を奢ることなど
有り得ないことだった

ラーメン屋さんを出て
アパートの階段を駆け上り
部屋の鍵を開け
ちょっと待ってて!! と彼に声をかけ
急いで部屋に入り
彼のセカンドバッグを取った

ラーメン代は要らないから!!

そう言って彼にバッグを渡しドアを閉めた

苛立ちを露わにした彼の靴音が
遠ざかるのを聞きながら
部屋の灯りをつけると
飲みかけのコーヒーカップの横に
彼が忘れて行ったカフスボタンがあった

彼は ラーメン屋を出る時も
バッグを渡した時も
ごちそうさま!! と言わなかった

財布を忘れたのは
もう一度部屋に上がり込む為の手段だったのか

私は 彼が忘れていったカフスボタンを
右手でぎゅっと握り窓を開け
アパート前の空き地に思いっきり放り投げた

やはり
なるべく関わりたくない人種だ

あの男が食べたかった夜食は…

たとえご私が馳走になったとしても
そう簡単に落ちる女じゃない
まして
自腹でラーメン代を払って抱かれるほど
私は安い女じゃない

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